33年目の初対面

今すんでいるところは僕が幼稚園のときから住んでいたところだ。幼稚園のころからずっと気になっていた喫茶店が駅に行く途中にある。中学校までは毎日前を通っていたが、入る勇気もお金もなかった。高校以降は通学・通勤経路が変わったため忘れかけていた。
印象的だったのは店に飾られていたモンキーのチョッパーと、スポーツカー。きっと車やバイクが好きな人がやっているんだろうな、と車が大好きだった小学生のころの僕は思っていた。小学校のころ大流行していた750ライダーに出てくる「ピットイン」という喫茶店に似ている、と勝手に思っていた。
最近事情により実家に戻って、その喫茶店が結構遅くまでやっていることがわかった。もちろんアルコールは出すんだけれど喫茶店という形でこんな繁華街でもなんでもない町で遅くまでやっているのは珍しい。帰りが遅い僕には大助かりだ。でもなんとなく「夢は触らぬほうが…といった感じで入らずにいた。
何週間か前の台風の日雨は強くなったり弱くなったりしていた。駅を出たときには傘を差さないでも大丈夫だったのだがその喫茶店の前まで来ると強烈な雨と風になり、雨宿りがてら喫茶店に入ってみた。
中は予想通り古ぼけた木目調の内装、みんな常連のようでわいわい騒ぎながら備え付けのテレビを見ている。テレビでは鳥人間コンテストをやっていたが途中で台風中継に変えられた。カウンターの中にはゆるーい感じの若い女の子が楽しそうに働いている。いや、働いていることが楽しそう、というのとはちょっと違う。でもどなんだか楽しそうだ。そして店の中に扉のついた公衆電話のブースがあるというのも時代を感じさせる。
宴会のお客さんも台風にもかかわらず2組いた。住宅地らしく家族連れも混じっている。
外の雨風は周期的に激しくなったり弱くなったり。僕みたいに非難してくる人は折らずやってくるのは常連の人ばかり。
常連の一人の人は明日から休みを取って香港旅行だといって心配していた。もう一人の常連はマスコミで働いているらしい。
「僕もここら辺はずいぶん昔から知っているんですよ」、という話をした。マスターがあのオートバイのオーナーなのかな、と思ったがマスターとは話すチャンスがなかった。
外に出ると雨は上がっていて、強風で壊れたビニール傘がお猪口になって逆さになって地面から生えていた。